あの夏、わたしはキミに恋をした。


「桃菜のお母さんのお弁当ももちろんおいしいけど、桃菜のはもっとうまい。桃菜才能あるよ」

「だから、大げさ!」

「いや、ほんとほんと」

「…あのね」

「ん?」

「実は少しだけ考えてたの。将来について。調理の仕事もありかなって。お母さんが作ってくれる料理ももちろん好きだけど、自分で料理をするのも楽しいって思ってたし、今こうやって大輝がおいしそうに食べてくれてるのをみてね、こうやって料理で人を笑顔にできる仕事につけたらいいなって」


はじめて話すことだった。

中学生のときまではバドミントンしか頭になかったし、料理をはじめたのだって高校生になってから。

でも今わたしのお弁当をおいしそうに食べている大輝をみてわたしの夢は強くなったような気がした。


「めっちゃいいじゃん。桃菜にぴったりの夢だな」

今日はじめてわたしの料理を食べたくせにぴったりなんておかしいけど、それでもやっぱり大輝の言葉は心にすっと入ってくる。


「それにね、大輝がプロの野球選手になったときにわたしが食事の面で管理できたらうれしいな…なんて」

いってからこれじゃあまるでプロポーズみたいだ、と後悔した。


「はは、そうだな」

案の定、大輝の顔はさっきと違って曇っていて。

「ごめん、忘れて。寒いしそろそろ戻ろうか」

「おう、ほんとありがとな」


大輝の顔は無理して笑っているようにみえた。