私は1人じゃない




昼休みの時間。


今日は特別で弁当を作らないでコンビニで購入したサンドイッチを食べる。


たまごとハムサンド。


「ちょっといい?」
「あ、うん」


青のはちまきに、赤の刺繍で名前が書かれている体育着。


1年生か…


学年カラーがあって、1年生が赤、2年生が紫、3年生が黄色。


関わったことがない後輩がなんだろう。


体育館裏に連れて来られて、


「あの、お願いがあるんですけど」
「うん」


「午後のリレーで僕出るんですけどその時にはちまき交換してくれませんか?」
「え、なんで?」


「その、気になってる人とかとハチマキ交換すると願いが叶うし、結ばれると聞いて…」


なんだそのちちんぷいぷいみたいな幼稚なおまじない。


そんなんで結ばれるわけ無い。


「ごめん、無理」
「そうですよね……霧野さん人気ですもんね」


人気かどうか知らないけど誰かに渡す気がない。



「リレー頑張ってね」
「はい!頑張ります」


落ち込んだと思ったらすぐ機嫌を良くしてその場を去っていった。


ハチマキ交換の風習はなんとなく知っていた。


去年は私はピンク組で交換したいと数え切れないくらいに言われたけど断った。


理由は今年も去年も一緒。


誰かと結ばれるつもりがないし、恋愛をするほどの心の余裕がまだない。


心に深い傷が刺さったような、引きずりたく無いのに傷の痛みを心で感じてしまって、正直辛い。



そんな状態で恋をしたいなんて微塵とも思わない。


多分、傷が癒やされても、多少マシになったと思っても、


誰かを愛そうとは思わないと思う。


ーーー人は裏切ると分かっているから。