「お前はバカか」
「………なんだよそれ」
「だからバカかって言ってたんだよ」
「なんでだよ」
久しぶりに雅紀と居酒屋。
雅紀が来てすぐに杏衣ちゃんのことに触れるから、
「家から出て行った」
と正直に言ったら、
「は、なんでだよ!どこに行った!」
とバンバン聞かれたから友達の家じゃねと適当に答えた。
でも、多分水樹の家で泊まってる。
あいつが杏衣ちゃんを放っておくとは思えない。
心がモヤモヤする。
でも俺には止められなかった。
なんで杏衣ちゃんが俺を嫌いになったのか分からない。
俺が何かしたのかとずっと考えているけど答えは見つからない。
それがそれ以外の理由か。
梨沙子のこともあそこまで言われたら無視はできないし、もう頭がめちゃくちゃ。
「おい、勇斗」
「なんだよ」
「なんで杏衣ちゃんが出て行ったんだよ」
「俺のことを嫌いになったらしい」
「は?そんなわけないだろ」
「なんでそんなこと分かるんだよ」
「いやだって……」
「だって?」
「気づいてないのか」
「だからなににだよ」
雅紀が大きくため息をつく。
もったいぶらないで早く言えよ。
「杏衣ちゃんはお前のことが好きなんだよ」