「ごめん」
「お前のそういうところが好きなんだよ」


「どういうこと?」
「自分に傷があるから同じ痛みでもそうじゃなくても人の痛みを何倍も分かってるだろ、優しくて強い目してる、そういうとこ」



自分で全く考えたことない。


私は優しいとも強くとも思わない。



ただ、耐えて耐えて、でも弱くて逃げて家族と縁を切った弱い人間。


「弱いから」
「弱くねえよ」


「ママから逃げた」
「そんなの弱くないだろ、暴力する人から逃げるのは当たり前だろ家族だろうが関係ない」


「それはそうかもしれないけど……」
「耐えることだけが強いわけじゃねえから、生きるために必死にあがいてもがいて苦しんでも生きることが強いんじゃねえの」


私がママから逃げたのは生きるため。


苦しかったけどもがいてあがいて今息してる。


「じゃ私強いのかな」
「十分すぎるくらいな、水かけられたら普通泣くだろ、すまし顔でいるな、逆に心配になる」


「今までされたことに比べたらね」
「俺もそうやって考えて今まで生きてる、似てんな俺ら」



「そうだね」
「だから好きになったのかもな杏衣のこと、似てるって直感で思った」


「…………」