「辛いかもしれない。泣き出したいかもしれない。片想いって…辛いからね」
何かを思い出すように話す優奈
松本くんのことを考えているんだろう
「でもさ、諦めるなんて…可哀想だよ。好きっていう気持ちが勿体ないよ」
強い意志を持ったその目は、私には眩しすぎる
「1度きりしかないこの高校2年生で、じっくり育て上げたその気持ちを手放すなんて、彩はそれでいいの?」
「……っ…」
「私はさ、1回振られたんだよ」
「え?」
「信じてない?……ほんとだよ。碧に告白して、タイプじゃないってバッサリ断られた」
そんな過去があったなんて、知らなかった
「振られた日は、泣いて泣いて、泣きまくって、ご飯も喉を通らなかった」
今の優奈からはとても想像できなかった
「1人になる度に悲しくなってね……あれは辛かったな…」
「でも…諦めなかったよ、私。今では、粘り強く碧にアピールした前の自分を褒めてあげたいよ」
「……もし優奈が、松本くんにアピールしなかったら…」
「…うん、その通り。きっと今の幸せな生活はなかった」
もう、優奈がなんて言いたいかは分かった
“後悔だけはしないで欲しい”
その言葉は力強く私の胸に響く
「ありがとう……優奈」
「うん。頑張って…彩。もし……」
“もし…苦しくなったら、その時は私の胸に飛び込んでおいで。1人には……なって欲しくないから”
最後に、ギューッとお互い抱きしめあって、私たちは家に帰った
もう一度……頑張ってみよう



