『そうか。…お前はなんて言ったんだ?』



「こたえられないって……振った…」



『なんでだよ、お前なんで彩ちゃんのこと振るんだよ!!』



碧が電話の向こうで何かを叩いたのがわかった



「お前にはわかんねぇだろ…!」



『わかんねぇよ。……誠也の気持ちなんて。強いて分かるなら、振った原因が “あれ” のことだってぐらいだ!!』



「それだよ。俺は前に進めない」



『お前はなんであの事にずっと縛られてるんだ?いい加減…っ自由になってもいいだろ!』



苦しそうな、悲しそうな、そんな碧の声が耳に残る



「そんな…簡単じゃねぇんだよっ…。“あいつ”を不幸にさせたのは俺なんだ。俺が最後までついてなきゃっ…」



『そう言って…逃げてるだけじゃねぇのか。向き合うことを恐れて、逃げてるだけじゃねぇの?』



“逃げてる”



その言葉が俺の頭の中で響いた



『俺は知ってるよ。お前が誰よりも苦しんでることも。暗闇の中にいることも。だけどさ……その中にずっといたって…何も変わんねぇんだよ』



碧は俺の1番の理解者で、いつも俺を支えてくれた



だから今も、こうして俺を動かそうとしてくれてる


「だけど、俺が前に進めることなんて……」



『進む道なら…ちゃんとあった。だけどお前は……それから目を背けたんだ』



椎名の告白の事を言ってるんだとすぐにわかった




『実際に進んで、それが良かったか悪かったかなんてっ…この際どうでもいいんだ。ずっと動かないことがダメなんだよ!!』



「……っ俺は……椎名と向き合いたいっ…」



『あぁ』



「だけど俺の気持ちが…今どんななのか…よく分からない」