昼飯を食べていたら、いつの間にか碧たちの輪の中に椎名がいないことに気付く



「碧。椎名は?」



「飲み物買ってくるってよ。あ、そうそう誠也。はい、これ」



そう言って見せられた碧のスマホ



「…はっ…なんだよこれ……」



“椎名彩は風間誠也を脅してる”



「俺と優奈で彩ちゃんが来るまでに消したけど、もっとちゃんと見とけよ」



「……っ分かってるっつーの」



勘ってやつかな、今椎名が危ない気がする



手当り次第に使われていない教室を探しまくる



「どこにいんだよ椎名っ……!」



探しまくってみれば、資料室から声が聞こえた



椎名のシャツを掴み殴ろうとしている男を殴り飛ばし、着々と男を気絶させる



残ったのは俺と……椎名だけ



下を向いている椎名を、俺は抱きしめることも出来ない



頭を撫でてやることも出来ない



椎名が走ってここを出る時、俺は見てしまった



泣いていた



見たくなかった、椎名の泣き顔なんて



嫌でも思い出すから



“あいつ”の顔を



切ろうと思っても切れないあの関係に嫌気が刺して、いつしか泣き虫で鬱陶しいやつが嫌いになった



椎名をその部類に入れたくなかった



だから……泣いて欲しくなかった



だけど泣かせたのは自分で、今後悔している自分がいる




「ごめん……」



俺の言葉は、もう届かなかった



5限がもうすぐ始まることに気付き、早足で教室に向かった



「あ、風間くん。彩のこと知らない?」


教室に入ると、慌てたような顔をした碧の彼女、小林がいた



それより……彩戻ってないのか……?



急いで自分の席の隣を見るが、確かにそこに椎名の姿はない



「悪い…知らない……」