……次の日の朝はいつも通りだった



誠也が玄関の前までやってきて、2人で学校へ向かう


実は昨日の夜、彼からメールがきたんだ


“今日はごめん。また明日な”



謝ってくれて、スッキリするはずなのに、私の心はどこか曇っていた



どうしてだろう、そう考えた時に1つだけ理由が浮かんだ



“否定してくれないから”



きっとこれだ



変なこと口走ったとか、本当はそんなこと思ってないとか、言って欲しかったのかもしれない



だけど決めたから



わがままも言わないし、泣くなんてありえない



………っ…欲張りにはならない



だから私も、何食わぬ顔で彼に話しかけるんだ



昨日のことなんて何もなかった


そう思うことにした



「昨日ね、久しぶりにお母さんとお菓子作ったんだ」



「へぇ〜何?」



「マグロクッキー」


瞬間、誠也が吹き出した



「なんだそれ。不味そ」



「それは聞き捨てならないな。勘違いしないで、形がマグロなだけで味はちゃんと美味しいって」



「ぷっあはは!ムキになんなよ。でもなんでマグロ?」



にやにやしながら私を見るから、腹立つ



「弟がマグロ好きだから、お母さんがそれにしたの」


すると、誠也がビックリしたような顔をする



「弟いんの?」



「うん。小1の弟。ヤンチャで困る」


ギャーギャー家を駆け回る弟の姿を想像し、思わず笑う



「意外だな。末っ子感あるのに」



「そ?そう言われたのは初めて」



私は甘かった



私たちが呑気に話している間に、事態は急変していたんだー……