「原田さん、おはようございます」

「おはよう。ちょうどよかった、話があったの」

「話?」



なんの話だろう、とたずねる私に原田さんはにこにこと笑う。



「荻ちゃん、お見合いしない?」

「へ?お見合い?」



いきなりなんの話?



「知人の息子さんがお嫁さん探しててね、うちの病院にこんな子がいるの~って荻ちゃんのことを話したら一度会ってみたいですって」



由岐先生と私の噂話を知らないのだろう、原田さんは意気揚々と話を続ける。



「でも私、シングルマザーですし……」

「それがお子さんがいても気にしません、って。だから会うだけ会ってみない?頼くんにもパパがいた方がいいでしょ?」



頼の名前を出されて、言葉を飲み込む。



「それにこの先もずっとひとりで子育てするなんて大変よ。荻ちゃんに万が一のことがあったら頼くんも大変だし、そういうことも考えてあげないと!」



私に万が一のことがあったら……。

原田さんが親切心から言った言葉は痛いところに刺さって、はっきり断ることができなくなってしまう。



「……少し考えさせてください」

「もちろん。気持ちが決まったら教えてね」



原田さんに軽く会釈をすると、私はその場を歩き出した。