「ーーえ!?来週から仕事でベネチア!?茉白一人で行くの!?」
その依頼を受けることを決めるなり、私は高校時代からの友達のカロリーナと、カフェで会っていた。
カロリーナは、私より2つ年上の25歳のデザイナーで、ベネチア出身のイタリア人。
彼女は高校生の時に日本に留学をしてから、日本の虜になったらしい。
元々デザイナーを目指していたこともあり、ファッション科のある宝飾専門学校に通っていた。
一方で、宝飾専門学校のジュエリー科に通っていた私は、当時、イタリアを対象にジュエリー研究論文を書いていたこともあって、留学生であるカロリーナと意気投合。
元々、お母さんがイタリア語堪能で私も小さい頃から習っていたけど、さらにイタリア語が上手になったのはカロリーナと会話特訓のおかげだ。
「待って待って、どんくらいベネチアに滞在するの?」
「んーと、特に期限は向こうと話し合ってないんだよね。でもかなり難しい案件だから、長くなりそう。それでさ、カロリーナってベネチア出身でしょ?ってことは、レイ・グラナーテって知ってる?」
「そりゃ、めちゃくちゃ有名人よ!容姿端麗、頭脳明晰の完璧御曹司!25歳だけど恋人なし!」
ーー最後の情報はいらないけど、と呟く。
