そのイケメンは、フロントへ行き、フロントマンと短い会話を始める。
それも束の間フロントマンが私の方へ手で差し示し、つられるようにしてそのイケメンも私の方へ視線を向けた。
ーーパチリ、と目が合う。
(ーーえ?)
ーーカツカツ、
革靴を鳴らしながら、近寄ってくるイケメン。
(あれ、ちょっと待って、この人……)
「ーーSalve, signorina」
形のいい唇から紡がれる心地のいい声。
ーーこんにちは、という意味のイタリア語の挨拶だ。
「今回仕事の依頼をしたレイです。よろしく」
見る人を虜にさせるような、警戒心が一瞬でとけるような、そんな微笑を浮かべる彼に緊張を覚えた。
澄んだ青い瞳が、まるでなにもかもを見透かしてそうだったからだ。
人当たりの良さそうな笑みを浮かべたままの彼こそが、今回の仕事の依頼人”レイ・グラナーテ”だったーー……
