周りの人は、いかにも上層階級と分かるような雰囲気と身なりだった。
あそこで新聞を読んでいるダンディな方は、キッチリとしたスーツとネクタイがよく似合い、手首には高級そうなシルバーの腕時計が輝いている。
その上、あのカバンは超高級ブランドじゃなかったっけ…?
名前すら思い出せない自分の庶民さに、苦笑いしたくなる。
(ーーそれよりも時差ぼけと長時間フライトで頭痛い……)
ふぅ、と小さく溜息を吐いたとき、
ーーカツカツ・・・
ふと、大理石を鳴らす革靴の音がリズム良く響いて、顔をあげた。
ロビーの奥からフロントへ向かって歩く一人の青年。
彼もまたこの高級ホテルの雰囲気に合うような、白の綺麗なシャツに、上品な光沢を放つネイビーのパンツスーツ、そしてやはり高級そうなスクラッチバックと腕時計が目に入った。
(ーーうわ、イケメン。目の保養……)
スラリとした長身。天井のガラス窓から差し込む陽光が、彼の金髪をより煌めかせていた。
(ーーなんか、見覚えあるような?)
