「もう少し探索するか」

 渋賀はそう言うと、鮫都と歩き出した。五人の生徒がそれについて行き、残った者たちはその場にとどまる者、バスへ戻る者とに分かれた。

(ここにいてもしょうがないな。でも一人で動くのも危険か。癪だけど見に行くか)

 一真は距離を取りつつ渋賀一行について行った。
 少し歩くと、緩やかな崖にぶつかった。渋賀達は足を止め、崖下を見ていた。しばらくすると一同は崖を降りていった。
 一真が崖下を覗くと、馬車のようなものが見えた。
 渋賀たちは大きな岩に隠れ様子を見ている。一真も崖を降り、渋賀たちの後ろまで行った。

(なんだ? あれは)

 そこでは鎧を着た二人の男と、人型だが頭部が蛇のような形をした生物三匹が戦っていた。
 一真は渋賀たちのすぐ後ろにいたが、異様な光景に釘付けで一真の存在に気付く様子はなかった。
  鎧の男たちは次第に劣勢になっていく。
 蛇の頭をした生物は棍棒のような物で男の剣を弾き飛ばすと、もう一匹が横から槍で突き刺した。男は血を流しながら倒れた。

「うおっ、凄いな……」

 渋賀は額に汗を滲ませながら呟いた。
 一人対三匹になり、勝負は決したかと思われた。しかし。

「ウッ! ヴェオ」

 小太りの男田端がえずいた。その瞬間、蛇の頭部がピクリと動いた。三匹のうちの一匹がすかさず走ってくる。

「まずい、見つかった」

 渋賀が逃げる態勢に入ったが、蛇は瞬く間に接近。岩の上に飛び乗った。

「あぁ? 何だ、こいつら」

 蛇が見下ろしながら言葉を発した。

「うわ……た、助けて下さい」

 田端が命乞いした。

「俺たちの言葉が話せるのか?」

 蛇が無表情のまま言った。

「こいつ、日本語話してやがる」

 渋賀が呟くと、蛇は渋賀に向かってジャンプし、着地と同時に棍棒で頭を殴打した。渋賀は倒れた。

「俺の質問に答えろよ」
「ゆ、許して下さい……ごめんなさい」

 田端が涙目になって懇願している。恐怖で誰も動けずにいた。

「俺はいたぶってから殺すのが好きなんだ」

 その一言で更に恐怖が広がった。蛇は尻尾をうねらせ、舌なめずりした。