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2021年5月某日・都内北S駅
家路へ向かう人が増え始めた17時

レースがふんだんに使われた灰色のロリータ服を着た若い女性が、北口改札を通って駅内に入った。

とても目立つが、奇異で見る目はなく、皆、チラリと視線を送ってはすれ違っていくだけだった。

だが、それも暫くのこと。

彼女がバッグから取り出したのは、二つのサバイバルナイフ。

バッグをそのまま足下に落とした彼女を周りの人間は少し不審に思いつつ、少し距離を置きすれ違うも、送られる視線は少し長くなっただけで悲鳴を上げる者もなく、駅内はいつもと変わらない。

それも暫くのこと。

この後、駅内は逃げ惑う人々の怒号で溢れ返り、改札の外にまで血が流れ出ることとなった。