第一節 出会い

 知らなかった。恋がこんなにも苦しくて楽しくて、どうしても抑えられないものなんて。

 ダン、ダーンダダーン。外まで鳴り響く体育館の壁や床をボールがたたく音。それの伴って歓声を上げる女子生徒の声。外ではグラウンドや学校の外周を走っている生徒やテニス、サッカーなどそれぞれのスポーツに多くの生徒が打ち込んでいる。いつもと同じ。何も変わらない風景だ。
この神聖女学院は百年の歴史を誇る県内でも有名なスポーツ校で多くの将来有望な選手が通っている。その中でも、学校設立当初から活動しているバレーボール部は全国大会でも上位に入る強豪だ。

「打て!ミナ!」
 バシン!と大きな音とともに強烈なボールが体育館のコートに突き刺さった。
「ミナ、ナイス!今日も凄いアタックだね。あんなの拾えないよ。」
「サクラ、そんなこと言わない!全国で勝つにはこのくらい拾っていかないと勝てないよ。」
「そんなこと言ってもミナのアタックは大人でも拾えないんだよ~、サクラ達には強すぎるよ~。」
「大丈夫。サクラ達は上手だからあのくらい拾えるようになるよ。」
「え、そうかな?ミナにそう言ってもらえるならサクラ頑張るよ!」
 私はサクラに笑顔をむけながら頑張ろうと頷いた。
 サクラとは生まれた時から家が隣の幼馴染で小学生の時から一緒にバレーをしている。私が最も信頼を置いている親友だ。
「でもホントミナは凄いよね。インターハイもまだなのにもう実業団から話があるんでしょ?」
私はサクラの言葉に慌てて首を横に振った。
「いやいや、そんなんじゃないよ。ちょっと練習に参加してみませんか?って言われただけ。それに今はみんなとインターハイに行くことしか考えてないしね。」
「そっか!そうだね!みんなで絶対インターハイに行こうね!」
サクラがそう言ったときキャプテンから集合と言われた。
「じゃあ、今日の練習はこれで終わるから、来週のインターハイの県予選に向けて金曜日から合宿だからしっかりと体のケアをしてね。」
「やーっと終わった。ミナ、一緒に帰ろ!」
「あ、ごめん、この後も残ってちょっと練習したいからさ、先に帰ってて。」
「え、まだやるの?!週末は合宿なのに?さすがだな~ミナは。もうサクラはくたくただよ。じゃあ先に帰ってるね~。」
「うん、ごめんね、ありがとう。サクラも気を付けて。」
うん、と手を振るサクラに手を振り返しながら私は一人体育館に戻っていった。