―紅葉side—
《どうしてそんなこと言うの…?もみじなんか大嫌い!》


守りたかったのに……嫌われてしまった。柳さんは俺なんかよりもきちんとしていそうな大人の男性だった。すぐ怒る俺とは違って至って冷静で……俺では紫吹を取り戻せないことが一瞬で分かった。


葵たちと別れてきてまで俺は何をやっているんだ……。教師である俺なんかより柳さんのほうが紫吹を幸せにしてやれる。


なのに俺は……紫吹を責めて、一番嫌がる言葉を使ってしまった。

「あの……。」

「貴方はさっきの……。それに紫吹も。」



柳さんと手をつなぎ肩を震わせながら涙を流す紫吹。嫌がっていたのをわざわざ連れてきてくれたんだろうか…?


「きちんとお話ししておいたほうがいいと思って戻りました。訴えられることも覚悟で話します。たしかに、僕は彼女が未成年だということを分かっていてバイトを頼みました。僕の専攻は裸婦画です。もちろん、社会人である僕が女子高校生の裸を描くなんて正気ではないと思われると思います。でも……最初は本当に下心なんてありませんでした。1日、2日の予定でしたし芸術のためだけにお願いしていました。でも、彼女の笑顔を見ていて独り占めしたくなりました。だから……モデルの日にちを少しのばして思い出だけ作って諦めようと思いました。そんな時、彼女に告白をされました。社会人である僕が手を出すことなど許されるはずがない。だから最初は断りました。でも、彼女はそんな僕に思い出だけでもいいから抱いてほしいと言いました。どうにか彼女に諦めてもらえるよう今日のデートをセッティングしたんです。うまくいってもいかなくても最初から抱かないという選択肢しか考えていませんでした。でも彼女と話していて喉から手が出るほど欲しいと思いました。必ず彼女のことは幸せにします。だから……どうか……僕を受け入れてもらえませんでしょうか……?」



「私は……皆が言うようないい子じゃない。期待されて辛くて……葵とも一緒にいられなくなって消えてしまいたいって思ったときに柳さんと会った。私は最初から体の関係を持たれると思って柳さんの手を取った。ヌードモデルだって最初は抵抗があったけど、柳さんの前では本当の私でいられる。だから続けた。柳さんは大人の人だから仕方なく私に付き合ってくれていたのも分かっていた。それでも一緒にいたくて今回のデートもお願いした。援助交際だって言われても、汚い女だと思われてもいい。お願い、一緒にいさせて。」





そうか……最初から紫吹には俺のことなんか見えていなかったんだな。



「俺は……教師の立場としてお前らを認めるわけには行かない。生徒を守るのが俺の役目だからな。でも……この人がいないとお前は辛いんだろう。だったら……俺自身には止める権利はない。」
「もみじ……。」


「ただし、必ず学校を卒業しろ。それが、俺が2人を認める条件だ。」


今俺にできることは慰めることじゃなくて支えてあげることだけだ。慰めるのも紫吹を幸せにするのもこの男の役目だ。



「紫吹……幸せになれよ。」