「レイモンド、このテレビ番組知ってる?君くらいの歳の甥っ子が好きなんだけど……」

「はあ?そんなもの見ても面白くないし!知らねえよ!」

「レイモンドは算数が得意だって聞いたよ。計算が得意だなんて羨ましいな」

「お前が馬鹿なんだろ!クソッたれ!!」

先生は僕の暴言を聞いても、「そうだよね、イライラするよね」と微笑んで受け止めてくれる。それに少しずつ閉ざされた僕の心が開かれていった。こんなに自分に向き合ってくれた人と出会ったのが初めてだったから……。

「先生、何で僕と向き合ってくれるの?僕なんて、誰からも必要とされてないんだ。だから死んじゃってもいいはずなのに……」

心を開き始めてすぐのこと、僕は先生に聞いたことがある。その時、先生は「そんなこと言っちゃダメだよ」と僕の頬をそっと包んで言ってくれた。

「死んじゃってもいい人なんてこの世に誰一人としていないんだよ。レイモンドはちゃんと必要とされてる。少なくとも、僕はレイモンドとこうして話せるのが嬉しいんだよ」