家族と紅茶とお菓子を楽しむティータイムが大好きだった。いつも両親は、僕の話を楽しそうに聞いてくれて、僕を優しく抱き締めてくれたから。

「すごいわね、レイモンド」

「ああ。さすが、父さんと母さんの子どもだな」

二人は仕事が忙しく、家に帰ってこない時もあった。でも、帰ってくるといくも僕の話を聞いてくれて、家族三人でレストランに行ったり、映画を見に連れて行ってくれる。だからどんなに寂しくても、僕は父さんと母さんのことが大好きだったし、大切な人だと心の底から思っていた。……あの日までは。

十歳の誕生日を盛大に祝ってもらった翌日、リビングに行くと、無表情な顔をした父さんと母さんが椅子に座っていた。二人の薬指をいつもはめられていた指輪は何故か外され、テーブルの上に置かれている。

「父さん、母さん、おはよう」

重苦しい空気の中、何とか声に出して挨拶ができた。でも、この空気が変わることはなくて、代わりに父さんからこう告げられる。

「父さんと母さんは離婚することになった。それぞれ、結婚したい人ができたんだ。どっちについてくるか、好きな方を選びなさい」