もし沙織が 樹達のように 無邪気に 父と接していたら 父は 変わっていたのだろうか。


何故 子供の頃の沙織は 父に 心を開けなかったのだろう。
 


多分 母の気持ちが 反映していたから。


母は いつも 沙織達に 優しく 愛情を注いでくれた。

母が 父に苦手意識を 持っていたから。


沙織と弟も いつからか 父が 苦手になっていた。
 

樹達と話す父を見て 沙織は 初めて 父を可哀そうだと思った。


不器用で 素直に 子供達と 接することができなかった父。


きっと 寂しかったと思う。


でも沙織は 父を 許すことはできない。



沙織も 父以上に 寂しかったから。
 


「お母さん こんなにたくさん トマト採れたよ。」

ザルに いっぱいのミニトマトを 翔は 得意気に持って 階段を下りてくる。
 

「樹、翔、アイス食べるか?」

父は 照れ隠しのように キッチンに入って行く。
 
「うん。食べる。」

父の後を 子供達は追って行く。
 

「2階、暑かったな。」
 
「やったー。チョコバーだ。」


父と 子供達の声を聞いて 沙織は胸が熱くなる。


樹と翔は 今日も 沙織を 感動させてくれた。


この子達の 母になれて 本当に良かったと 沙織は思っていた。