大らかで 細かい事を 気にしない紀之。

でも 紀之は 驚くほど 繊細な観察力で まわりを見ている。


子供達にも 色々な事を 遊びながら 教えていた。
 


ある日 歩きはじめた翔が 樹のところへ 駆けて行って 

樹が 積み上げた積木を 壊したことがあった。


集中して 積木を積んでいた樹は 驚いて 翔を見る。


翔は 邪気のない笑顔で 樹に笑いかけた。
 


沙織は ハラハラして 二人を見ていた。


樹が 翔を 怒るのではないか。


二人の間に 割り込むことを 少し待って 様子を見ていた。
 



「カッ君、お兄ちゃんと 遊びたいの?」

樹は 翔に問いかけた。

ニコニコ 頷く翔。


樹は 積木を高く積んで 翔と一緒に 崩しはじめた。

二人で ケラケラ笑って。


何回も何回も 崩すための積木を 積んであげる樹。


沙織は 胸が熱くなった。
 

「タッ君、優しいね。偉いね。」

沙織は 樹に 声を掛けた。


沙織が 見ていたことに 驚いた樹は はにかんだ笑顔で 沙織に頷く。


樹が まだ 5才になる前のこと。