──あの頃──


夏休みが終わり、学校は2学期を迎えた。
水「あぢ〜〜〜〜〜!!?」
晴「ほんとそれ…もう秋だろ…?」
水「なんでまだセミ鳴いてんのよ〜?」
奏「そりゃちょっとはまだ鳴くよ…」
水「……もうこんな時期か…」
奏「へ?…?」
水「あ、いや〜!なんでもないの〜よ〜?!」
奏「そ、そっか…?」
私は咄嗟に隠してしまった。友達なら、言った方がいいかもしれないのだけど、言えなかった。今は、楽しく過ごしたいから。
水「そ、それよりさ、ね?この前さ〜」
奏(絶対なにか隠してる…あんまりやりたくないけど…無理やりにでも聞いてやる…友達として…好きな人として何があったのか知っておきたい…!)

キーンコーンカーンコーン

休み時間は終わり、いつも通り学校が終わった。暑いし、早く帰りたかった。すると、
奏「ねぇ、水香、今日一緒に帰ろうよ!たまにはまたお話しよう!」
水「ん〜いいよ!でも…」
奏「あ、嫌だった…?」
水「いや…奏夜それ暑くない?」
奏「?これ?僕、日焼け止め塗るの嫌いだからさ」
奏夜はこんな暑い日にも長袖長ズボンを着ていた。日焼け止め塗るのが嫌いなのに、顔はそんなに焼けていない。奏夜も何か隠しているのかもしれない。
テクテクテク
奏「…水香、聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
水「?なになに〜?」
奏「そ、その…言いにくかったらゴメンだけど…"こんな時期"って、何かあったの?」
水「あぁ…それか…」
奏「あ〜なんかゴメン!!」
水「ううん、大丈夫。友達になったからには、奏夜にも話さないとね…それはね──」

2年前の秋

水「やっほー!で、話したいことってなぁに?」
晴「そーそー、今日遊べる?あのゲームやりたいんだけど…」
水「親がいいって言うなら全然いいよ!」
晴「よっしゃー!!うちで遊ぼ!」
水「うん!そうしよ!」
私達は、また遊ぶ約束をした。いつも通りだ。
晴「でもー2人じゃ寂しいからー清誘ってくるね!」
水「え?あ!うん!分かった!?」
晴「?」
水(清が好きなことは絶対バレたくない!!)
すると、教室にふざけた言葉が響いた。
?「みんなー!!水香は清のことが好きなんだってーー!!!!」
水清「はぁ!!??」
晴「ちょっと!あんた適当なこと言って人に迷惑かけてんじゃないよ!!」
水(なんで…なんで…?もしかして…バレてたの…?そんな…)
?「だって事実じゃーん」
晴「事実かどうかは本人に確認してから決めなさいよ!!でもたとえ事実だとしてもこれは許されないよ!!律(りつ)!!」
律「なー水香ーお前清好きなんだろーー!?」
水「好きじゃないし!!あんな人を好きになるなんてないから!!!」
律「嘘つけーーーwwww」
水「やめてよ!!??」
気づいたら、私は自分の教室に戻っていた。私と晴は、今年違うクラスになった。だから、私はいつも晴のクラスに言っては雑談をしていた──ハズだった。
明「るり大丈夫?何かあったの?」
妹「なんか、いつものるりの顔じゃないよ?」
水「…ううん!大丈夫!ちょっとからかわれただけだから!」
明「んーだといいんだけどねー」
明日と妹とは同じクラスになれた。百七も一緒だが、今は外にいるのだろう。教室にはいなかった。
明「そろそろ休み時間終わるから、じゃーね!」
妹「ばいばーい」
水「またね〜」
─言えなかった。大切な友達に、真実を言えなかった。心配させたくないから。

その後も、嫌がらせは続いた。どっちの教室に居ようと、廊下にいようと、律はまったくやめなかった。
水「う……」
清「大丈夫か?スゲー疲れてんじゃん」
水「え!?いや!大丈夫大丈夫!!」
清「絶対大丈夫じゃないだろ…」
水「うぇ……」
清「………ちょっと来い」
水「え?ちょ!!」
清に腕を引っ張られて、私は体育館裏まで連れていかれた。律は来ていないだろうか。
水「…ねぇ…なんでこんな所に来たの…?」
清「教室とか廊下だと、すぐアイツが来るだろ…」
水「そ、そうだけど…何をするの……?」
好きな人と2人きりになんてなるから、心臓がバクバクしていた。すると、
清「ごめんな!俺のせいで水香がこんな酷い目にあうなんて知らなかった!」
水「え待って急に何!!?俺のせいって何!?」
清「俺が、お前にばっかり話しかけるから…今みたいな事がおきてんだろ…アイツ究極のカマチョだし」
水「!そんなことない!元はと言えば私が…っ!?」
口を塞がれてしまい、何も喋れなくなってしまった。
清「いいか?俺は、お前に傷付いて欲しくないんだ…だから今日、先生に言え…そしたら何かしらしてくれるだろ」
水「ふぃふう(みつる)……」
やっぱり、好きだった。私を守ってくれるその姿は、凄くかっこよかった。が─
清「っ!隠れろ!!」
水「へっ!?」
私は体育館の壁に隠れさせられた。こっそり様子を伺ってると…
律「何だよお前1人かよ〜」
律がいた。
清「…1人だからなんだよ」
律「いやぁ〜お前らが2人揃ってる時に言いたいことがあったんだけどさ〜?1人ならいいや」
私と清に言いたいこと…?何それ…何か嫌だな…
清「…………言ってみろよ」
律「まぁいいよ。お前の目の前で水香に「清は本当は他の女の子が好きなんだぜ」って言ってやろうかなって」
…え?
清「お前そんなふざけた事っ!!」
律「おーうおーう落ち着けって」
清「何が落ち着けだ!!水香がそんな事信じるわけ無いだろ!!」
律「いや、分かんないじゃん。あいつ純粋だし自分に自信ないから信じちゃうかもしれないだろ?」
清「お、おっ前なぁ……っ!!」
ガシィッ
清が律の胸ぐらを掴んだ。でも律はビクともしなかった。体格の差がありすぎる。
律「弱いなぁ…それで彼女守れんのか?」
ダァンッ!!
水「っ!!!」
清は体育館の壁に打ち付けられ、肩を両手で抑えられてた。私はどうすることも出来ず、見てることしか出来なかった。
清「ガッッ…あぁッッ…!!」
律「ほら、ダメじゃんww」
そう言うと律は手を離し、その場を去った。律が下駄箱に行くのを確認してから、私はすぐに清の元へ駆け寄った。
水「清!!!」
清「す…水香……ごめん…ごめんな…」
泣いていた。いつも元気で、明るくて、人を笑わすのが大好きな、上手な清が、目に涙を浮かべていた。でもそれは、痛みから来た涙ではなかった。
水「清……私…あんな事絶対信じないから!!」
清「うっ……ひくっ…ありがっ…とう…っ…」
私達は残りの昼休みをずっと体育館裏で過ごした。

放課後

水「す、すみません!先生!」
先生「ん?何?」
水「あの…私…」
私は今までのこと、律の嫌がらせのことを全て話した。
先生「…でもさ、律って隣のクラスだろ?隣に行かなきゃいいんじゃないの?」
水「あ……そ、そういう問題じゃなくて…」
気が弱い私は、隣のクラスに居なくても嫌がらせをされることを言えなかった。
律「ラブラブだーー!!!」
水「もういい加減にしてよ!」
もう何も分からない。ただ大嫌いな奴が同じ空間にいるってことだけ認識できる。
清「お前マジでやめろ!!うるせぇんだよ!!」
律「おー?彼女は守るってか??」
清「なんとでも言え。それはお前が言ってるただの身勝手な言葉だ。俺と水香には関係ない」
清がその言葉を言った瞬間、何故か一気に力が抜けてしまった。何もかも、解放された気分だった。
水「あ…あ…う…うぅ……」
清律「?」
水「うああぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁ!!!」
律「げっ!?」
清「ちょっ水香!?」
晴「何事!!?」
明「えっちょるり!!?」
妹「るり大丈夫!?」
私の友達が次々と教室に入ってきた。
杏「るりを泣かせたの誰!!?」
百「おい律ちょっとツラ貸せや」
律「俺じゃねーし!直接泣かせたの清だし!!」
清「でも原因はお前だろ!!バカか!!?」
律「うるせぇ俺は悪くねえからな!!」
百「おい待てやゴラァ!!!」
水「あああぁあぁぁぁぁぁん!!」
明「もう大丈夫だよ…あの調子だと律はももなんにボコられるし、先生にも怒られるよ…」
水「ああぁっうぅっぐすっっうあぁっ……」
清「……もう我慢するな…」
水「うっ…うあっ…あっ…うがっ…」
その後、律は担任に見つかり親に連絡され、転校することになつた。私はもう苦しめられた生活からは解放された。たが、まだなんかモヤモヤする。スッキリしない。……憎い……
水「……許さない……転校したら許されると思わないでよ………許さない…許さない……」
────ただでは済まさない────
水「!?うぅぁぁ…頭が痛い…うわっ…!?」
ガクンッ
水?「………はは…そうやって逃げてられるのも今だけだ……ふふふっ…あはははっ!!」