──黒く染まる放課後──


高校生達はほんの少しだが、焦っているように見えた。
高校生A「答えられないって…じゃあ答えてやるよ」
高校生の1人は、口を開いた。
高校生A「こいつ、俺たちにぶつかってきたんだよ。そんで、前髪が長いからそのせいで前が見えなくてぶつかってきたんだろうと思ってさ。しかも女っぽくてダサいから切ってあげようとしたら断られてさ、こっちは親切で言ってるのにマジなんなん?そう思ってムカついたからちょっと軽いお説教してただけだよ」
高校生はそう言った。
水?「それだけでですか?人と人がぶつかるなんてよくある事じゃないですか。あなた達学校で誰かとすれ違った時ぶつかったことないんですか?」
高校生B「そんくらいあるっての。それが、ぶつかって飲みもんが服にかかったんだよ」
水?「ですが、だからといってこのように暴力を振るっていい訳にはなりませんよね?本人もそれなりに反省してる様子なので、帰らせたらどうでしょう?」
高校生A「だ、だけどこれ、コーヒーだぜ!?めっちゃ落ちにくいんだよ知ってる!?だからこいつに──」
ドンッッッ!!!!!
強く壁の板を蹴る音が、細い路地に響く。それに高校生達は驚いていた。
水?「だから何?さっきも言ったけどだからっていじめていい理由にはならねぇんだよ…人が嫌がっているのにごめんなさいって謝ってるのにもうやめてって言ってるのに!!??」
小学生がこんなことを言うものだから、彼らは半分怖がっていた。小学生の女の子に対して、彼らは恐怖で少し震えていた。
水?「分かってんのか!!?おめぇらはこの子に死ぬほど怖い思いさせてんだよ!!そんなのあたしには少し見れば分がんだよ!!」
私は、怒りで言葉が濁ってきていた。ここまで来たら、ほとんど勢いで喋ってるも同然だ。そして何故か、その紅(くれない)の瞳がある目からは、涙が零れていた。
水?「女みてぇとが言ってだげど!女みたいな男はこの世に数え切れないほどいるんだよそんぐらい知っとけよな!!?男に限らず女にだって男みたいな人だっていんだろ!!?そんなことも分かんねぇの!?」
私は泣きながら高校生達にそう言った。そして、やばいと思ったのか、私が喋るのを止めた。
高校生A「わ、悪かったよ!だから帰らせてくれ!頼む!」
水?「悪かった?私に言ってんの?帰らせてくれ?この子は帰らせなかったのに?頼む?この子だってやめてってお願いしたのに?ざっけんじゃねぇよ!!!この子にだけ辛い思いさせておめぇらにのこのこと帰らせるわけあるかぁ!!!?馬鹿なの!!?」
私はさらに怒鳴った。そして、本当に怖くなったのか、声を震わせながら言った。私と、男の子に。
高校生A「ご、ごめんなさい…も、もうしません…((ガタガタ」
高校生B「お、俺も…ご、ごめんなさい…め、眼鏡を弁償させてください…」
すると、男の子はここに来て初めてハッキリと言葉を喋った。
?「あ、あの…眼鏡は、大丈夫です…それに…お金受け取るのも面倒なので…はい…」
高校生は、その言葉を受け取ると、素早く路地を抜け、走って帰った。
水?「君、大丈夫?随分と殴られてたように見えるけど」
?「あっ、ぼ、ぼ僕は大丈夫です!はい…助けてくれてありがとうございます…」
男の子は弱々しい声で私に礼を言った。
水?「はい眼鏡。割れてるけど。君さ、この辺の子?見ない子だけど」
私が眼鏡を渡しながら尋ねると、男の子は眼鏡と髪の毛を整えながら答えてくれた。
?「あ、ありがとうございます。ぼ、僕は、一昨日この町に引っ越してきました…な、名前は…」
男の子が名前を教えようとすると、私はそれを止めた。
水?「私は、名前を聞いてないから、わざわざ言わなくて大丈夫だよ。ありがとう。それに…」
?「あ、ごめんなさい…そ、それに…?」
男の子が申し訳なさそうに謝ると、私は口を開いた。
水?「私、1度しか会ってない人の名前なんか覚えられないからさ」
私はこう言葉を放つと、帰ろうとした。しかし、男の子はまだ何か言いたかったのか、帰ろうとする私の腕を掴んだ。
水?「どうしたの?」
?「あのっ!名前は知らなくていい!ただ、その…また会えるかな…」
水?「そうだね…運が良ければ、ね。」
私は最後にそれだけ言うと、男の子にほんの少し笑みを浮かべた。そして、走りながらも私の体からは黒い物が吹き出ていた。同時に、私の意識は再び遠くなる。