take 2
約束の1週間が今日で終わる。俺、荒岡雪也は隣にいる彼女、長沢百合を見た。彼女はテレビでやっているお笑い番組が好きなようだ。さっきからずっと笑っている。彼女の綺麗な顔を見るととてもアンドロイドとは思えない。この1週間の間俺は彼女に告白した。しかし彼女は、「私は多分貴方とは付き合えない。私は貴方のことが好きだけど、私はアンドロイドだから。」と言われた。俺は、「そうか...。」としか言えなかった。明日、この作業場から彼女は居なくなる。それが少し寂しいと思ってしまう。戦争はまだ続いているだろうから明日彼女は仕事を再開するだろう。以前過去のことを語った彼女は最後にこう言った。
「私、人なんか殺したくない。」だから俺は、「大丈夫、百合が人殺しだろうと俺が百合を想う気持ちは変わらないよ。」そう伝えた。明日でお別れだな。「1週間ありがとう。」そう小声で言い、いつの間にか隣で寝ている彼女の頬に口付けした。さよなら俺の初恋。

そして別れの日の朝、「1週間ありがとうございました。」そう言った彼女は朝の光を浴びて輝いていた。
「じゃあ,お元気で。」と俺は心細く思いながら彼女に言った。外で車のブレーキ音がした。突然彼女が 、「次会ったら私を壊して。」と言った。俺は彼女の腕を引き半分強引に彼女の唇に自分の唇を押し付けた。そして彼女の耳元で「次会ったら俺を殺して。」と囁く。政府の制服を着た人が2人、入口で待機していた。「さようなら!」と彼女は言い、2人のところまで走って行った。車が行ってしまうと、俺は仕事をやる気が失せた。作業場の机に彼女と撮った写真がある。その写真を見てため息をついた。彼女はもう戻って来ない。一生人を殺し続けなければならない。それが彼女の使命だから。しかし、彼女がこのまま人を殺し続けてしまったら?彼女はどうなってしまうのだろうか。
何とかして救ってあげたい。考えた挙句俺は今どき珍しいスマートフォンを出してアドレス帳から彼の名を探し、通話ボタンを押した。そう、彼が1番政府に近い人物で俺の唯一頼れる人だから。数回コールが鳴った。まだか、と俺は焦りながら思った。