take 1
時は20XX年、世界は破滅の危機に陥っていた。
穏やかだった街は消え、今は人々の悲鳴や爆発音が聞こえる。

集中しろ。私、長沢百合は自分に命令した。今は人を殺すことだけを考えろ。そう教わってきた。周りの仲間は泣き叫ぶ親子を今、殺そうとしている。子供は幼い。これからの人生を台無しにさせたくない!強くそう思った私は死ぬ覚悟で飛び出した。相手が発砲したレーザー弾が心臓の近くに当たった。「逃げて...早く!!」私は小声で親子に言った。銃を持った仲間は「何故民間人を庇った?!命令違反だぞ!!」と、叫んだ。私は、「良いんです。別に、」と言った所で意識が飛んだ。死んだ。でも、死ぬ前に1つ善い事をした。
私はとてつもなく大きな音で目が覚めた。
「あれ?私生きてる。」そう呟くと、「そうだね、だって俺が直したから。」横に見知らぬ男の人が座っていた。輝く星のような銀髪、透き通るような白い肌、黒い瞳。私は知らないうちに恋をしていた。「整備士の荒岡雪也(あらおかゆきや)。よろしくね。」と、彼は言いニッと笑った。「き、機体番号70310 、長沢百合(ながざわ ゆり)です。」と私は自己紹介をした。「70310、君はもう直ったから政府に連絡入れるね。」そう言って彼が行ってしまうのを私は止めた。「ま、待ってください!お願い!!連絡入れないで!」私は土下座する勢いでお願いした。「それと、私のことは百合って呼んでください!」そして最後にちょっとした我儘を言う。「しょうがないな、あと1週間ここにいていいよ。百合さん。」と彼は言った。「はい、ありがとうございます!」と私はお礼を言った。それから1週間、彼と一緒に生活が始まった。ある日私は昔のことを思い出した。私が生まれたことを知った父は男の子ではないことを確認すると、私が幼稚園に入るくらいの年齢になった途端手術室に放り込んだ。
父はそれから戦闘型アンドロイドとして私を教育してきた。父はいつも「同情するな。血の前進をしろ。世界の運命はお前に掛かっている。」そう言い続けた。長沢光一(ながさわ こういち)
私の父だ。彼は冷酷非道な人間であり、彼自身がアンドロイドではないかと噂されているが残念ながら彼は人間だ。そしてそんな父の娘である私も同じく噂され、恐れられていた。幸い私の母は、とっくに他界している。原因は、持病の悪化。あと少しで助かると思っていたのに、父が殺してしまったのだ。たまたま病院にお見舞いに来ていた私を病室から追い出し、母の腕に刺さっていた点滴の針を抜き、酸素マスクを取り外し、父の研究所で取り扱っていた蛇の猛毒が入った注射器を母の腕に刺した。私は父を許さない。絶対に。