奈莉sideー


すやすや俺の膝の上で寝てる天使みたいな女の子に視線を落とす。



「美莉……。おかえり……。」



そんな俺の声を聞いて、美莉は身じろいだ。



それだけの行動でも、かわいいって思う俺は重症かも…。



無意識に笑みがこぼれる。



他の女にはなにも感じないのに…



そんな俺を見て、運転手の泉さんが微笑んだ。



「お嬢様はほんとに愛くるしいですね。何年たっても…。奈莉様のお顔が緩むのを久しぶりに拝見した気がします。」



「そうだなー。美莉は俺にとって唯一の愛しい妹だから。それに美莉は誰よりもかわいくて、愛くるしいよ。もう離れたくないって思うほどにね…」



やっと、やっと会えたから…



あんなことがあって心配になってテレビ電話しても、美莉は変わらず大丈夫って天使みたいな笑顔で笑ってた。



本当はすごくつらいはずなのに…。



俺はその言葉に安心してしまったんだ。



美莉なら大丈夫って。


そんなことあるわけないに…。


強く見えてもまだ高校生。



おとなの中で過ごしてきたから、おとなになるのが早かっただけ…。


いや、おとなになるしかなかった…。



美莉は周りが気づかないところで、悩んだり、苦しんだりしてきたはずだ。


それでも完璧でいるために努力したのか…。


美莉には感服させられっぱなしだよ。



せめて日本にいる間だけでも、休んでくれたらいいんだけど…。




「みりはすごいね…。」



俺は青空に浮かぶ月を見ながら呟いた。