だから、私は恋や少女漫画のような展開に憧れるなんてこともないまま大人になって働いている。仕事か恋愛どちらを取るかと聞かれたら、真っ先に「仕事」と答える。交際相手を必死で探す人の気持ちが正直わからない。

メイクもおしゃれも「男に見てもらいたい」ではなく「自分のため」。男に何を言われてもときめかないし、仕事が恋人。これが私、磯山三恋都だ。

「あっ、三恋都〜……。仕事に集中してるとこ悪いんだけどさ〜……」

思い出したかのように未来が私を見つめる。こういう切り出し方は、大体私が嫌がることを頼む時だ。もう何年もの付き合いなので、よくわかる。

「一生のお願い!今日の合コンに来てほしいの!」

「断る!何で男嫌いの私がそんなところに行かなきゃいけないのよ!」

手を合わせた未来にすぐに反論する。男と女の出会いの場なんて、一生行きたくない場所だ。

「お願い!お昼奢るからさ〜。今日来る予定だった人が一人来れなくなって、その数合わせで来てほしいの!お酒飲んでるだけでいいからさ〜」