次の金曜日、ミカは恵子と待ち合わせした。飯田橋に10時。

焦る気持ちを落ち着かせるように、ミカは清楚な白のワンピースに身を包み深呼吸をし、寮を出た。そして駅までの坂道をゆっくりと登った。

「待った?」
「ううん。今来たとこ。」
「じゃぁ。。。行こうか。。」

二人は深く長く続く大江戸線のエスカレーターに乗り、緊張を隠すかのように他愛もないことを話し始めた。

しばらくしてエスカレーターを降りると、近未来のトンネルのような長い地下通路が二人を待っていた。薄紫とネオンピンクのトンネルは独特の光を放ち、これから二人の向かう世界を象徴していた。

「写真。。とろっか?」

どちらからともなく言い出した。ミカはカメラに向かう自分の顔がうまく笑えてないのに気づいた。

長い地下路を乗り継ぎ、地上へと顔を出すとそこは六本木。
地理に不慣れだった二人は、とりあえずメイン通りにある、お客が集まっていそうなレストランに入った。緊張から来る喉の渇きを癒すためにマンゴージュースを頼んだ。

「本当は渡り蟹のスパゲッティーも頼みたいんだけど、ガーリックが入ってるとさ。。」
恵子が小声で言った。

「そうだね。」
ミカは笑った。

二人が用意してきたクラブの情報誌を広げていると、一人の中年紳士が近づいてきた。

「こんばんは。料理はどう?」
「おいしいです」二人はハニカムように答えた。
「僕、ここのオーナーなんだけど、クラブ探してるの?」
「はい。クラブ初めてなんで。。」
「そしたら『XX』に行ってみな。僕にも息子がいるんだけど、そこ好きでよく行ってるよ。有名人もよく来るらしいしね。」

オーナーは情報誌の地図に印を付けてくれ、優しく微笑みながらその場を去った。

(なんかいいことありそう。)ミカは思った。

二人は情報誌を手にし、『印』を目指して歩き始めた。