「クラブって行ったことある?」

ミカは恵子の顔を覗き込むように聞いた。

「ないけど。なんで?」

「ちょっと、前から行ってみたくてさ。一人で行くの不安だからさ、恵子、一緒に行ってくんない?」

それが始まりだった。


有名大学に入り、もう3年が過ぎた。
卒業に必要な単位も取ったし、寮と学校の行き来は正直つまらなくなっていた。
そんなある日、テレビでタレントがクラブの話をしていた。

(これだ!!)

クラブという未知の世界。
なんだか分からないけどゾクゾクする。

ミカのベクトルがゆっくりと夜へと傾いて行った。