中学一年生の秋。

僕は人生で二度目のイジメにあった。

クラス委員長に立候補し、なれたはいいものの前回の委員長が優秀すぎて非難される結果となった。

その時は柊亜緒とは距離が色んな意味で離れていた。
部活に一緒に入った時は、同級生の久保田に取られないようにってずっと彼女と話していた。

それも無駄だったのかな、なんて。

距離が離れて気がついた。
普段とは変わらない生活、彼女は必要が無かった。倦怠期というやつだろうか、それともただ飽きただけなのか。

同じクラス委員になった山口という子に言われた衝撃の一言があり、僕は彼女との間に大きな壁を作った。

「柊さん、久保田さんと一緒にもりもりの悪口言ってたらしいよ。」

それが不登校への1歩だった。

嫌われた。
何が悪かったんだろう。
辛い。
悲しい。

机の中に入っていた悪口が書かれていた紙。

「馬鹿、学校に来るな、偽善者」

偽善者でもいいから、だから、君だけは僕を嫌わないで。

不登校になって一日目、僕の昼夜逆転生活が始まった。

夜に食料を買いに出かけて、朝に寝て、夜に起きて、先生からの電話も「今は話したくないです」と自分で断った。

不登校になって3日目、さすがに母親に心配された。

机の中に入っていた悪口の紙。母親にも知られていたらしく、母親は先生に電話を入れた。

さすがにそうなっては学校に行くしかない。保健室登校でもいいから、と先生には言われた。

学校の名誉のためにもいじめは解決しないといけないのだろう。

その考えも僕にとっては辛いものだった。生徒の気持ちなんか分かっていない。

学校に行くと、放課後に数人が謝りに来た。泣いて謝ってきた子もいた。

「ごめんなさい、もうしません。次は止めます。」

皆同じことを言う。

まるで覚えた言葉をすぐに使う小学生のようだった。
それでも許すしかない。
許さなくても、先生が割り込んで許す羽目になる。

「体の傷は治せても、心の傷は治せない。」

分かってるならするなよ。
なんで僕だけがこんな目に遭わないといけないんだ。

学校に行き始めて何日後だったか。

柊亜緒が謝った。
彼女に謝らせてしまった。

僕は悪くない。
悪くないのに。
なぜ僕も謝りたくなるんだろう。

彼女に謝らせてしまった罪悪感から、僕は泣きそうになった。

ただ、学校に来て1番安心したことがあった。
彼女は元気そうだった。

好きだよ。
やっぱり好きだ。
どれだけ陰口を言われたって。
僕は君が好きだ。
僕の前では笑顔でいてくれる君が好きだ。