今世間はコロナ禍に陥っている。
何処に行ってもコロナコロナ。
気が滅入ってしまいそうだ。

まあ、しょうがない。そう思いながらパソコンの電源をつけ、新クラス1年2組の皆と初顔合わせをする。

僕はコミュ障でもあり陰キャでもあるので、出来るかぎり目立たないようにしていた。

彼女に会うまでは。


「柊 亜緒さん」

「はい」


画面いっぱいに映し出される君。

ショートカットで、顔が小さい分、大きく見えているメガネをつけてる君。

僕はその時初めて一目惚れというものを経験した。

そして彼女の何より印象的だったのは、彼女の画面に映し出されている影絵だ。

後ろで誰かがしているのだろうか?犬の影絵や様々な影絵が現れていた。

(何だこの子、面白い。仲良くなりたい。)

思春期の僕は単純だった。仲良くなりたいと思えば、すぐに仲良くなれる。
そういうものだと思っていた。

それから2ヶ月、初めての登校日。

バスから降りて校門を抜けると、見覚えのある顔があった。

(柊さんだ…!)

僕は話しかけようと思ったが、引かれたくない一心であまり話しかけられずにいた。

(話したい、けど、急に話しかけたら引かれそうだし嫌われそう…)

だが、欲に忠実な僕は覚悟を決めて話しかけてしまった。

『ねえ、君2組?』

「そうだよ」

『そ、そうなんだぁ…』

運命というものが存在するなら、今の現状がそうなのだろうか。

そして神よ。
今その運命を起こすなら、その前に僕にコミュ力をください。


それから話しかけられないまま2、3週間が経った。

僕は僕で、彼女は彼女で仲のいい友達が出来た。

それでも僕は彼女のことを目で追ってしまう。
これが恋なんだな、と気持ち悪いことを考えながら友達と何気ない話をしていた。

毎朝の礼拝。長い話。眠くなる声。
毎回毎回いい加減にしてほしい。

ただ、今回ばかりは感謝している。

話をしている方の言葉を「ヤス」と聞き間違い、

『(え、え?)』

とキョロキョロしていた時に彼女と目が合った。ドキッと心臓が鳴った気がした。

礼拝が終わると、彼女は僕の席にやってきて言った。

「森田さんってスマイ〇ー知ってるの?」

初めて彼女から話しかけて貰えた。それだけで僕は嬉しかったがちゃんと応答しないといけない。

『うん、知ってるよ。柊さんも?』

「知ってる!わ〜同じクラスに知ってる人いるんだ〜」

『だね〜私も嬉しい〜w』

そう、僕が行っている学校は女子中学校。
女子しかいないのだ。

中身が男の僕はハーレムだ〜としか感じていない。

僕は性別に違和感を持っている。

それはトランスジェンダーか、Xジェンダーか、それは分からないがXジェンダーの可能性が高いと考えている。

それでも恋する対象は同性。

性別に違和感を持っている人を差別している今の人たちに、僕の悩みを伝えれない。

僕の恋は、毎回静かに散っていく。