大切な人のために


「美紅!」

彼の溢れる涙が、私の頬にポタポタと落ちる。

その涙はとても切なくて、でもとても温かい。

‥‥‥なんでこんな時に思い出すのかな。

2人で過ごした思い出が走馬灯のように過ぎる。

好きだと告白してくれた時、物凄く嬉しかったこと。

初めて呼び捨てで呼んでくれた時、胸がキュンキュンしたこと。

週1、2回会うか会わないかぐらいだったけど、それでもちゃんとデートの計画を立ててくれたこと。

意見が合わずにケンカし合った日々もあった。

でも、先に謝るのはいつもキミだったこと。

私はキミから沢山の優しさと幸せを貰っていた。

だから‥‥‥。

これからは、守りたい大切な人のために注ぐんだよ。

「美紅!?」

私はゆっくりと目を閉じた。

‥‥‥晴人、今までありがとう。

幸せになってね。

「美紅!!!!」

彼の叫びを最後に、私の人生は幕を下ろした。