大切な人のために


「晴人、逃げて!」

必死に晴人の元へと駆け走る。

「美紅、どうした? ‥‥‥ハッ!」

私の声に振り向いた晴人だったが、すぐにナイフを持った人物に気づいたのだろう。

それと同時に通り魔も凄い勢いで迫ってきていて。

晴人を庇うように前に立って手を広げた瞬間。

「‥‥‥うっ!!」

胸にナイフが突き刺さり、強烈な痛みが全身に行き渡った。

「み、く?」

その場に立っていられなくなり、膝から崩れ落ちる。

「美紅!」

咄嗟に晴人が支えてくれて倒れずに済んだけど‥‥‥。

「おい、しっかりしてくれ! 頼むから!」

もう、どんなに頑張っても無理だよ。

身体中が物凄く痛くて指一本でさえ動かせない。

通り魔がすぐに走って逃げていくのが見えたけれど、もうそれどころじゃない。

大量の血が制服を汚す。