光の世界へ


「た、ただいま…」


現在の時刻、19時10分。
やっぱり、門限に遅刻してしまった。


「遅い!!」


静かに靴を脱ぎ、恐る恐るリビングに入ると、お母さんに睨まれた。


「19時までには帰ってきて、夕飯作る約束よね?どうして、約束を破るの?」


口元は笑ってるのに目は私を睨んでるお母さんが、ゆっくり近付いてくる。


どうして近付いてくるのか。それは、


「19時までに帰ってくる、これくらいのことも出来ないの!?」


パシッ!!


そう、私を殴るため。


「ごめんなさい…!」


あの頃の、優しかったお母さんはもういない。お父さんが亡くなって、お母さんは変わってしまった。私は日常的に、お母さんに殴られるようになった。


それでも、私は。私には。


殴るお母さんを、責めることは出来ない。


だって、


「あんたのせいで、あの人は…!レオンは死んだのよ!!どこまで私を苦しめるの!?」


お母さんにとって何より大切な存在だったお父さんを奪ったのは、死なせてしまったのは、紛れもなく私なのだから。

私には、お母さんを責められない。止められないの。


「ごめんなさい…ごめんなさい、お母さん…!!」


「あんたにお母さんなんて呼ばれたくないわ!!」


ドカッ!!


門限を破ってしまった悪い子の私には、殴る・蹴るの暴行の罰が与えられる。
殴られるのも蹴られるのも、とっくの昔に私の日常生活の一部になっていた。