「(…ん、ご馳走様でした。今日も美味しかった、ありがとう、私)」


静かにお弁当を食べ終え、作った自分に自分でお礼を言って、あとは蓋を閉めるだけ・・・のはずだったのに。


「え!!それほんと!?」


ガシャン!!


明るい茶髪にピンクメッシュの女の子が急に大声を出したから、ついビックリして蓋を落としてしまった。そこそこ派手な音を立てながら。


「…なぁ、今音がしなかったか」


あぁ…やっぱりバレてる…。音を立てないようにしてきた苦労が台無しじゃない…。


「俺見てくる!」


「待って一樹、私も行く!」



関わりたくない。


そう思うのに、私はあっさりと見つかった。



「え…!」


「マジ!?【氷のビスク・ドール】じゃん!」


女の子はビックリしたように目を見開いて、一緒に来た男子はあからさまに私の不本意なあだ名を呼んだ。その声に驚いたのか、他の男子達も続々と寄ってくる。みんな、驚いたような顔で。


「・・・【氷のビスク・ドール】、ね。そのあだ名は、私に対する嫌がらせなの?」


今まで、私の前で堂々と【氷のビスク・ドール】なんて呼ぶ子はいなかったから言わなかったけど。サラリと言われたことで、つい言ってしまった。


無意識に零れた、私の本音。


「え、いやそんなつもりじゃ…!」


「別にいいよ、興味無いから。あなた達は私を知ってるみたいだけど、私は知らないし。じゃあ」


焦ったような顔をしている男子を無視して、私はドアに向かった。もう屋上に来るのはやめようと思いながら。


「…ちょっと待てよ」