「あっ、そこにいるの【氷のビスク・ドール】じゃない!?」


「うそっ!?同じクラスなんだ!」


どうも、皆さん。
私、三原麗羅といいます。今日から高校二年生です。

私は昔から、感情を表に出さず、常に無表情です。
そうして過ごしているうちに、高校生になってしばらくした頃、誰が言い出したのか、【氷のビスク・ドール】という本人非公認のあだ名が付けられました。
もちろん、私に直接そう呼んでくる人はいないけど。

私は【氷のビスク・ドール】なんて柄じゃない。むしろ、【疫病神】の方が私には相応しいのに。
父を死に追いやった、【疫病神】の私に【氷のビスク・ドール】なんて、嫌がらせにも程がある。


「あのっ…三原さんっ、おはようっ!」


そう考えていた時、急に話しかけられた。
隣の席の子?クラスが変わって、まだクラスメイトの名前も覚えてない。一年の時も、あんまり覚えてなかったけれど。


「・・・おはよう」


挨拶されたら、挨拶を返す。けれど、必要以上の会話はしない。それが私。

その子が話したそうにしているのを無視して、私は窓から空を眺めた。
空を眺めて、話しかけないでオーラを放てば、大抵の子は察して話しかけないでくれるから。


「(・・・まだ、先生来ないのかな)」


さっさと始めればいいのに。自己紹介でも、授業でも。


『キャーーー!!!黒蝶よ!!!』


これから1年間過ごす新しいクラスや、クラスメイト達に対してなんの感情も無い自分に、我ながら冷めてるな・・・と思っていた時、至るところから女子の黄色い悲鳴が聞こえた。いや、男子の声も。


「やばいっ!カッコイイ!!」


「翔様ぁ!!」


「みんなかっこいい・・・!芸能人みたい・・・!!」


「悠里ちゃん、やっぱめちゃくちゃ可愛くね!?」


「彼女になってくんねぇかなぁ・・・」


そんな声を聞きながら、私は心底バカにしていた。黄色い悲鳴を上げている女子達に向かって、「めちゃくちゃ可愛い!」と騒いでいる男子達に向かって。


そんなことに使う時間があるなら、勉強して、有益な知識を頭に詰め込めばいいのに。
そんなことで騒いだって、将来なんの役にも立たないのに。
ほんと、おめでたい頭。脳内お花畑なのかしら?


この時は、考えもしなかった。
この後、この騒ぎの原因になっている人達と関わることになってしまうことを。