ほんとに椿さんは、恋人じゃないの?
でもタトゥーなんか、本気じゃなきゃ入れないでしょ?
じゃあ、もしかして――……片想い、とか?
可能性はあるかも。
恋愛より旅が好きな女の子だって、静さんも言ってたし。
――あと少しで椿って呼ぶところだった、彼女のこと。
ジェイは、わたしに椿さんを重ねてた。
要するに、わたしは……彼女の身代わり?
手を引かれて階段を降りながら、こぼれそうになった吐息をごくって無理やり喉の奥へ押し込んだ。
別にいいじゃない、それで。
同情されるより、都合よく利用し合う関係の方が、気が楽だ。
いろいろ想定外のコト――このうるさすぎる心臓の音とか――はあるけど、大丈夫、大したことじゃない。
失恋したタイミングで目の前にイケメンが現れたら、誰だって意識しちゃう。
こんなの全然特別なことじゃないし、意味なんてないんだから。
自分に言い聞かせて、モヤモヤとした何かを吹っ切る様に前を向いた――
カシャカシャ!


