その後ジェイも交え相談して、足元は黒のサボサンダルに決定。
もともと身につけていたもの一式は、今日一日預かっていただくことにして。

――素敵なデートを楽しんでらっしゃい♪

そんな言葉に送られて、わたしたちは静さん宅を後にした。

持ち物は、小さめのショルダーバックのみ。
足元のサンダルはしっかり厚底で安定感があって、いつもより視線も高くて……エントランスを出れば、あれほど厚かった雲間から陽の光が幾筋も差してる。

そのせい、かな。
まるで羽根が生えたみたいに、テンション上がってる気がするのは。

決して、断じて、さっきの彼の反応のせいじゃない、と思う。
思うけど、ただ、ちょっと……

――え、静さん、何ユウのこの背中! 肌、見えてるじゃん! 

――しまったな、こんなセクシーで可愛くなっちゃうなんて……他の男に見せたくない……見せたいけど、見せたくない!


あんな風に、素直な驚きと賞賛を向けられたのは、久しぶりだったから……
ちょっとだけ、嬉しかったことは、否定しないけども。


「ん? どうした?」

不思議そうな声に我に返り、階段の下から見上げるジェイへ慌てて「なんでもないよ」と首を振る。

「えっと、後でお金、払わせてね? この服とかカバンとか、お金出してくれたって静さんから聞いたよ」

「金? 日本の男って、デートで恋人に金払わせるのか?」
「ちっ違うでしょ。わたしたちは恋人じゃなくて、ただのフリで、ニセモノで。だから、そこまでしてくれなくていいよ。ほ、本命の彼女に申し訳ないし……」

「本命の彼女? 何それ」 
どこか呆れたような口調が遮った。