放っておけない……あぁなんだ、そうか。

どこか甘く優しいものを含んだその声音とセリフで、ようやく全貌がクリアに理解できた。


つまり、椿さん――ジェイの知り合いにわたしが似ていて、それで同情してくれたと、そういうことか。

もしかしたら、静さんの娘さんがそうなのかもしれない。

椿の花の凛とした美しさと、中国横断一人旅に出ちゃうような勇ましさを頭の中で重ね……そのタイミングで、やっと閃いた。

あのタトゥーの花が、椿だって。

そういえば海外だと、パートナーの名前彫ったりするって聞いたことがある。
じゃあ2人は付き合ってる、のかな……。


チクンとなぜか胸の奥に痛みが走った気がして、とっさに胸に手を置いた。


「なんだ、まだこんなとこにいたの?」


「ぎゃっ」
うわ、変な声でちゃった。
突然背中叩くんだもん!

「し、静さん、ぉおどかさないでくださいっっ」
「あ、緊張してるんだ? ジェイの反応が気になって? かーわいー♪」

こっちの動揺を都合よく解釈してくれた彼女は、中の様子を確かめることもなく、勢いよくドアを開け放ってしまう。

「し、静さ――」
「お待たせジェイ! 見て見て! できたよー」