顔をあげると病室のドアが開き、長身のイケメンが入って来た。
室内の2人、いや3人を見てアーモンドアイを甘く緩ませたのは、奈央の夫である。
「拓巳さん! お邪魔してます! ……っていうか、わたしそろそろ帰らなきゃ」
随分長く居座っちゃったと慌てて、そして名残惜し気に小さな手から自分の指を引き抜き、バイバイと手を振って……
「そこで偶然会ったんだ。行き違いにならなくてよかったね」
拓巳の言葉に振り向いた。
そして気づく、ドアのところにもう一人……誰かが立っていることに。
誰だろう、とスラリと伸びたデニムの足を上へ辿り――
「っ!!」
とっさに声をあげてしまいそうになって、ギュッと両手で口を覆った。
うそ……
声にならない声でつぶやいた栞の前、彼がゆっくりとサングラスを外す。
露わになったのは、この数日間片時も頭から離れてくれなかった、甘く美しい眼差しだ。
「ただいま、栞」


