「きゃーーーーーーっ可愛いいぃいいいい!!!」
ジタバタと悶えながら、栞は奈央の腕に抱かれた赤ん坊を覗き込んだ。
「天使だ、天使ですね、あぁ天使降臨っ!! 尊いっ!」
さっきから語彙力が極端に貧しい。
それも仕方ないだろう。
まだ生後1週間にも満たない、ようやくうっすらと目が開くようになったばかりの赤ん坊だ。
「あぁああ可愛い。もう絶対、将来はミスユニバース日本代表ですよ! 今ですらこんなに可愛いんだから!」
すべてのパーツがちまちまと小さく、ふにふにと柔らかく、とにかくどこまでも可愛らしいの一言で、さっきから栞はデレデレだった。
病室の中は、すっかり片づけが終わっている。
今日は退院日だ。
「家の方にも遊びに来てね?」
「いいんですか!?」
「もちろんよ」
ほんとにお邪魔しちゃおう、と栞は思う。
赤ちゃんは本当に可愛いし……それに今の彼女にはたっぷり時間がある。
そして、一緒にいてほしい人は、今ここにいない。


