ブーブー!!
ブーブー!!
「えっと、どうかした? 後ろからクラクション、めちゃくちゃ鳴ってるけど」
ジェイの指摘にハッと我に返った永井は、あわわわと車を発進させた。
「で、どういう意味? その後、“次回もぜひ本番生ハメで”とか書いて――」
「ああああ! えええとね、それはね、まぁなんていうか、彼独特の表現で……生のカメラから訛ってええと……つまり翻訳すると生出演って意味なんだけどさ」
「へぇ、生ハメって言うんだ」
「いややややや、言わない!! 言わないよ! 全然言わなーい!」
激しく否定されて、あっけにとられる。
「えええとそれはさ薮内語っていうかさ、薮内ワールドの中でしか使えない言葉なんだよねっだから他の人には絶対使わないで!! 特に女性相手に使ったりしたら、間違いなくドン引きされるよ!」
「それは……困る」
気を付けよう、とこくこく頷いた。
栞に嫌われるのは絶対避けたい。
「変態だ。絶対変態だ。あの人外見は普通にイケオジのくせして、なんで中身があんなに残念なんだよ……」
自分のことを棚に上げて何事かをぼやいている男はとりあえず放っておく。
窓の外に見覚えのある高層ビル群が見えてきた。
その景色にジェイは目を細める。
もうすぐだ。
もうすぐ、栞に会える……
「ところでこの車、どこに向かってるんだ?」


