「あ、それからあの馬淵っていうプロデューサーだけどさ、ABCテレビの。左遷になったよ」
「左遷?」
「どっかのローカル局に飛ばされるんだって。若手タレント食ってたこと、ADが証言して証拠の動画も出ちゃったから、言い逃れできなくなっちゃって。結局、全部本人、認めたんだ。まぁ相手側が明るみにでるのを望まなかったから、起訴まではいかなかったけどね」
「そっか……薮内さんには、随分世話になったな」
ABC音楽祭の責任者兼プロデューサー、潤子の古い友人でもある彼は、今回馬淵の悪行を暴く際いろいろと協力してくれた。
「大丈夫大丈夫。あの人、常務の椅子を馬淵と争ってたからさ。ライバルが消えてくれて、万々歳ってところだよ」
「へぇそうなんだ。あ、そういえば……」
「ん? 何?」
「この日本語ってどういう意味? 薮内さんから来たメッセージなんだけど、どうもわからなくて」
「えージェイにもわからない日本語があるんだね! いいよいいよ、お兄さんが教えてあげよう! どれどれ?」
赤信号でちょうど停車したため、いそいそと後ろを振り返り、永井は差し出されたスマホを見下ろした。
その画面には、こう書かれていた。
“生ハメって最高♡”


