マリオネット★クライシス


「それで――栞はどうしてる?」

都内へ向けて、順調に走り出した車内。
Marionette Crisis(自分の曲)”をBGMとすることに多少の居心地悪さを感じながらも、ジェイはずっと聞きたくてたまらなかったことを口にした。

「心配しなくてもいいよ。無事に退所手続きは終わってる。超高速でね」

返事を聞いて、大丈夫だと思ってはいたが、やはりホッとした。

「でもアクトライツなんて大手が、よくすんなり退所を許したよね。しかもジェイのMVのおかげで、これからブレイクっておいしい時にさ。マスコミは何か裏取引でもあるんじゃないかって、その話題で持ちきりだよ」

何も言っていなかったけれど、おそらくライアンが手を回してくれたのだろう。
そうでなければ、栞という金の卵を事務所があっさり手放すはずがない。

「彼女、このまま女優辞めちゃうのかなぁ。絶対もったいないよ! うちの事務所に来ればいいのに。うちならさ、ブタゴリラより百倍マシな優秀なマネージャーが揃ってるしさ。ほら、宇佐美君とか、女性タレントには合うと思うんだよねえ」

「……さぁな」

それはジェイにもわからない。
それは栞が決めることだ。彼女はもう、自由なのだから。

ただ願わくはその未来に自分の居場所があれば……いや、なくても作るつもりだが。