「それで――栞はどうしてる?」
都内へ向けて、順調に走り出した車内。
“Marionette Crisis”をBGMとすることに多少の居心地悪さを感じながらも、ジェイはずっと聞きたくてたまらなかったことを口にした。
「心配しなくてもいいよ。無事に退所手続きは終わってる。超高速でね」
返事を聞いて、大丈夫だと思ってはいたが、やはりホッとした。
「でもアクトライツなんて大手が、よくすんなり退所を許したよね。しかもジェイのMVのおかげで、これからブレイクっておいしい時にさ。マスコミは何か裏取引でもあるんじゃないかって、その話題で持ちきりだよ」
何も言っていなかったけれど、おそらくライアンが手を回してくれたのだろう。
そうでなければ、栞という金の卵を事務所があっさり手放すはずがない。
「彼女、このまま女優辞めちゃうのかなぁ。絶対もったいないよ! うちの事務所に来ればいいのに。うちならさ、ブタゴリラより百倍マシな優秀なマネージャーが揃ってるしさ。ほら、宇佐美君とか、女性タレントには合うと思うんだよねえ」
「……さぁな」
それはジェイにもわからない。
それは栞が決めることだ。彼女はもう、自由なのだから。
ただ願わくはその未来に自分の居場所があれば……いや、なくても作るつもりだが。


