いきなり勢いが削がれて、言葉が途切れた。
視界をかすめた何かに、気を取られたからだ。
何だろう? って反射的に目を落とし……アッと声を上げそうになった。
これって……タトゥーだ。
シャツの襟からチラリとのぞく、彼の左胸。
引き締まった肌に、手の平大の花が一輪、描かれている。
花弁がぽってり丸みを帯びた、鮮やかな紅い花。
ま、まさかのヤンキー系?
もしかしてヤバい人にケンカをふっかけてしまったんじゃ、ってゴクリ、唾を飲み込んだ――
「エロオヤジって、どういうこと?」
怪訝そうな声が降ってきて、ハッと我に返る。
「え? えっと、それは……」
自分の発言を振り返って舌打ちを堪え、ぎこちなく彼のシャツから手を放した。
しまった、熱くなってしゃべりすぎた。
ダメだ、どうも彼といるとペースが乱れてしまう。
「いろいろ事情が、ありまして」
「事情、ね。……どんな?」
ぶっきらぼうな調子ではあったけど、その眼差しは思いがけないほど真っすぐこちらを向いていて。
真剣に耳を傾けてくれてるっぽいことに驚いた。
だって、こっちは見ず知らずの逆ナン女だよ?
そんな奴の言うこと、まともに聞こうとしてくれるなんて……。
そういえばさっきも、初めてだってわかったら止めてくれたっけ。
見た目とは違って、実は結構真面目な人なのかもしれない。
面倒見もいい方で、困ってる子を放っておけない、とか?
「エロオヤジにやるくらいなら、って言ったよな。そいつにバージンくれてやらなきゃいけない理由でもあるの? 生き残るためって、どういうこと?」


