<それ、僕のおススメ。柔らかくて破れにくい、極うすプレミアムコンドー「ぶぉほっ!!!」>

盛大にコーヒーを吹き出し、ゲホゲホとむせ込んだ。

<何? 大丈夫?>

手際よくスタッフを呼び止めて布巾を手に入れ、平然とテーブルを拭いてくれる男を戦慄きながら睨む。

<な、な、なんってものを……>

<え、だって彼女の前で慌てるなんてカッコ悪いじゃないか。君、初めてだろ?>

<な、な、なんで、初めて、って……>

<そりゃあ、昔から椿椿って、うるさかったし。僕が恋人を紹介するたびに、『オレはライアンみたいにはならない、絶対一人だけを大事にする』って言ってたし?>

ようやく念願かなってよかったねぇ、とかなんとか、ほのぼのと微笑まれ、脱力するしかないジェイだった。



ちなみにこの日、カフェに居合わせた旅行客のうち何人かは、帰国後に友人たちにこう報告している。

「シンガポールの空港で、とても貴重な場面に遭遇したわ。絶世のイケメンがコーヒーを吹き出したの。知ってる? イケメンって、コーヒー吹いてもカッコいいのよ!」