ぴったりと隙間なく重なった唇。

「ん、……栞……」

触れ合う唇の合間から囁く吐息交じりの声が、くらくらするほど色っぽい。

「んっ……ぁ、や、」

「そろそろ限界だ。早くホテルに戻ろう」

瞼に、頬に、顎に、濡れた感触を感じて、鼓動が暴れ出す。

「それ、って……あの、プレジデンシャルっ……スイート?」

「ん、気に入った?」

「それは、うんっ、ぁ……で、でも、ジェイっシンガポール、にっ……」

「プライベートジェットだから、ギリギリに空港着けば大丈夫。ライアンも言ってただろ、まだ半日以上あるからゆっくり休めって」

ニヤリと、麗しい唇が弧を描く。

「ゆっくりシような、栞」

「え、え、っと……」

なんか笑顔が怖いんだけど!
黒い何かが見えるんだけど!

あわあわしている間に両頬がしっかりと押さえられ、抗議の声は濃密なキスに飲み込まれてしまう。

熱い舌がするっと我が物顔で侵入して――
歯列を、咥内を、艶めかしくなぞったそれは、逃げる舌をやすやすと捕まえた。

「ん、ダメッ……ジェイ、ここ、そ、と……ぅ、んん……」


ダメだ、頭がぼうっとしちゃう。

溺れるような感覚に襲われて、わたしは彼の背中に縋り付いた……


「はぁい! そこまでよ、お二人さん!」