初恋で、大事な人……

ほら、やっぱりね。
わたしより、椿さんのこと……って、あれ? おおむら?

「宮本、じゃないの?」

「宮本? いや、違うけど。なんで?」
「だって……静さんの娘さん、でしょ?」
「静さんの娘……祐奈(ゆな)のこと?」
「祐奈??」

え、なんか……話がかみ合っていないような……
椿さんは、静さんの娘じゃないってこと?

「祐奈は確かに大事な友達だけど、恋愛対象としてオレが好きなのは、ずっとたった一人だけだ」

「大村椿、さん……?」

滲む視界の向こうで、なぜか彼は楽しそうにニヤニヤ……

「そんな顔するなって。ほんとに聞き覚え、ないの?」
「……え?」

聞き覚え? ってつまり、わたしが知ってる人、ってこと……?


予想外の情報に、呼吸が乱れる。
誰? 誰だろう?

不安に駆られながら、口の中でその名前を何度か転がした。