後ろから、声が追いかけてきた。
肩と腕とを掴まれて、強制的に振り返らされる。
「っ……」
「……なんて顔してるんだよ」
そのまま強く抱きすくめられ、きゅって胸が苦しくなった。
好き、ジェイが好き……
渡したくない……椿さんにも誰にも。
どうしたらわたしだけを見てくれる？
言いたいけど、言えない。
こんな奴めんどくさいって、嫌われたら……
身体を固くして必死に涙を堪えていたわたしだったけど、やがて、顔を押し付けているその身体が小刻みに揺れ――彼がくつくつ笑ってるっぽいことに気づいた。
「……ジェイ？」
え、確かに笑ってる。
「ごめん、栞が可愛すぎて」
何それ、って上げた視線をきつくすれば、ますます彼が笑みを深くする。
そして、言ったんだ。
「確かに大村椿はオレの初恋で、大事な人だよ。会えますようにって願掛けで、あんな絵を描いてもらうくらいに」
