隣から、微かな震えが伝わって来た。
「……ありがとう」
身体の横で握り締めた拳も、わずかに揺れてる。
きっと彼は、こんな風にお父さんにも認めてもらいたかったんだろうな。
その思いは、残念ながら届かなかったけれど……
「……そして、栞」
へ?
「ははいっ」
わたしっ!?
「ジェイのこと、よろしく頼むよ」
「はいっもちろん、がんばりま、す……? あ、あのっ……ジェイから聞きました。わたしのこと、助けてくださったって。ありがとうございました」
よかった言えた、って胸をなでおろしたのも束の間、ふわりと浮かんだ妖艶な笑みに、心臓が……いや、なんでドキドキしてんの!?
「君とはまた、いつかどこかで会う気がするよ」
「え?」
あ、会う?
きょとん、と瞬いた瞬間、ぐいっと身体が後ろに持っていかれる。
緩く羽交い絞めにされて、憮然とした声を聞く。
「彼女はオレの! 次にそんな目で彼女のこと見たら許さないからな!」
不機嫌さ全開でムキになってるのがなんだか可愛くて、笑っちゃった。
ジェイも弟キャラになっちゃうことあるんだな。
ライアンさんは慣れているのか、「はいはい。わかったよ」とニヤニヤ笑って軽く流す。
それから、ロイヤルファミリーみたいに爽やかに手を振った。
「じゃあね――Good luck, my friends」


