「ジェイ、さっきは緊急事態だったし、じっくり話す時間なかったけどね」
チラリと、その視線がわたしを捉える。
“さっき”っていうのは、わたしが攫われた時のことだろう。
「最近リーズグループを狙った犯罪が頻発しててね、君が関わってるんじゃないかってって疑いの声があったことは事実だ。君が最初から所在を明らかにしてくれていれば、ここまで混乱が起きることはなかった」
責めているようには聞こえない。
それでもジェイは、「はい」と神妙に頷いた。
「軽率に行動してみんなを騒がせたこと、反省してます。どんな処分も、覚悟してる。ただ彼女は……オレが巻き込んだだけだから、何も悪くない」
「後悔はしてないんだね?」
「はい」
即答した彼を、ちょっと眩しそうにライアンさんは見つめ、それからその唇へ微笑を浮かべた。
「わかった。じゃあシンガポールへ行っておいで」
「シンガポール?」
「我らがSDのリーダー・キング殿から伝言だ。総帥が、直接君の口から説明を聞きたがっている、と。明日、というよりもう今日、だな。総帥の専用機が、君をシンガポールへ運ぶから。そして――ジェイ」
ふいに、口調が柔らかくなった。
「今後の人生について考えていることがあるのなら、遠慮する必要はない。直接総帥に申し上げるといい。厳しい方だが、鬼や悪魔じゃない。きっと理解してくださるよ」
「……わかった」
強くジェイが頷いた瞬間、「不可能!」と大声がこだました。


